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BEYOND DISCOVERY
日経サイエンス
レーザーと眼科手術
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1. イントロダクション
2. はっきり見えます
3. 網膜――視覚の中枢
4. 一方,物理学の世界では…
5. 光のパワー
6. 分子に光を発生させる
7. まさにうってつけだったレーザー
8. アルゴンレーザーの登場
9. 目的に合ったレーザーを求めて
10. クレジット
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BEYOND DISCOVERY
THE PATH FROM RESEARCH TO HUMAN BENEFIT
■アルゴンレーザーの登場
 そうした開発にあたった先駆者の1人が,コロンビア・プレスビテリアン医療センターのレスペランス(Francis L'Esperance)だった。彼は1963年,糖尿病性網膜症を治療する試みにルビーレーザー光凝固術装置を使い始めた。この病気では血管に異常が生じ,血管壁が弱くなって破れやすくなる。血管壁が破れると硝子液が濁り,視覚が妨害される。また,瘢痕組織が成長して網膜を眼底から引き剥がすと深刻な視覚障害が生じ,失明することもある。
 
 1965年初めにレスペランスはニューヨークで開かれた学会で,研究成果をまとめた論文を発表した。彼が気づいた重要なポイントは,ルビーレーザーの赤色光のうち血液に吸収されるのはわずか6〜7%にすぎないという点だ。つまり,ルビーレーザー光凝固術装置で網膜血管を焼くには8〜10回もの処置が必要になる。レスペランスは血管がもっと吸収しやすい青緑色レーザーの開発を急ぐよう主張した。
 
image 折よく,そのようなレーザーが前年に開発されていた。イオン化したアルゴンを光源に使うレーザーだ。レスペランスはニューヨークでの学会から2週間後に,ベル研究所がその装置を1台保有していることを知った。彼はベル研究所のゴードン(Eugene Gordon)とラブーダ(Edward Labuda)を説得し,アルゴンレーザーを眼に導くための光学系と機械系を共同で設計した。最終的にレスペランスはレイセオン社から出力10ワットのアルゴンレーザーを入手し,さらに改良と注意深い実験を重ねた後に,1968年2月に1人の患者の治療に適用した。同月の終わりまでに,彼は糖尿病性網膜症の治療にアルゴンレーザー装置を本格的に使い始めた。
 
 およそ1年後には,ウィルマー眼科学研究所のパッツ(Arnall Patz)が糖尿病性網膜症をはじめとするさまざまな網膜疾患の治療にアルゴンレーザーを使い始めた。レーザー眼科学の他の先駆者たちとは異なり,パッツは民間企業の支援を得ていなかった。彼は自宅を抵当に入れて借金をし,そのお金でジョンズ・ホプキンズ大学応用物理学研究所にアルゴンレーザーを作ってもらった。これによって彼は1970年までに285人のさまざまな網膜疾患患者を治療し,1970年代初頭にはレスペランスやツウェンとともに,アルゴンレーザーの利用法を他の眼科医に教えるようになっていた。
 
 現在では糖尿病性網膜症の最も効果的な治療法は「網膜全除去」と呼ばれる方法であることがわかっている。ボストンにあるジョスリン糖尿病センターのアイエロ(Lloyd Aiello)が提唱した方法で,網膜血管を直接凝固させるのではなく,網膜周辺部のいくつかの領域をレーザーによって除去(蒸発)する。現在,糖尿病性網膜症患者に対する失明防止処置は,眼科学におけるレーザーの主要な応用となっている。
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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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