全地球測位システム(GPS)
1. イントロダクション
2. パイロットはどこだ
3. 正確な時間と場所
4. それは基礎研究から始まった
5. 時間の本質を調べる機器
6. ラビの時計
. 実用的な使い道
8. GPSとその将来像
9. クレジット
正確な時間と場所
 GPSによって,「自分はどこにいるのか」という問いに,驚くべき正確さで瞬時に答えられるようになった。この新技術は数十億分の1秒の精度で時を刻む原子時計を利用している。原子時計を作り出した科学者たちは,これが後に地球規模のナビゲーションシステムに役立つなどとは夢にも思っていなかった。このシステムが初めてマスコミに登場したのは,1991年の湾岸戦争だった。米軍はGPSを陸海空の航行や爆撃の目標決定,ミサイルの誘導に利用した。広大で目標の定めにくいアラビア半島砂漠地帯で,米地上軍が迅速かつ正確に移動できたのはGPSのおかげだ。

 その後,GPS技術は民生部門に利用されるようになった。今日,GPSは人命救助などさまざまな方面で社会に貢献しており,また巨額の利益を生み出す産業に多くの雇用を創出している。コンピューターチップの製造に用いる集積回路技術の発達によって,GPS送受信器の小型化・低価格化が進むだろう。クレジットカードのサイズとなって,たいていの自動車に装備されるほか,だれでもが持ち歩くようになる日も近いだろう。

 ここ数年の間に,GPSの応用分野は無限といえるほどの広がりを見せた。列挙してみよう。

◆緊急車両が目的地を特定し,道筋を表示するために利用。
◆海上で迷子になった船舶を探し出すのに利用。
◆トラック輸送・運送サービスが自社の車両を追跡し,配達を迅速化するのに利用。
◆海運会社が自社のタンカーや輸送船に搭載,航行支援や船舶の動きを記録・管理するのに利用。
◆プレジャーボートや小型商用船舶の所有者は航行をGPSに頼っている。
◆民間パイロットが航行支援や農薬散布,航空写真,測量に利用。
◆航空会社はGPSを用いて運行計画を練り上げ,数百万ドルの節減に成功した。GPSは小規模空港での計器着陸に活用でき,新型の空中衝突回避システムも可能になった。
◆地図づくりや地球の測量・調査に定常的に利用されている。道路地図の作成や森林火災の追跡にも用いられ,建設工事ではブルドーザーを誘導し,数センチの精度での整地を可能にしている。
◆地球科学者は地震や地球のプレート移動の監視に利用。
◆電気通信企業は地上のデジタル網の同期をとるため,自社の基準時計をGPS時間と直接比べるなど,GPSへの依存性を高めている。
◆人工衛星メーカーはGPS受信器を使って衛星の位置を追っている。
◆GPSは自動車に装備され,ドライバーは自分の位置がわかるだけでなく,方向の指示も得られるようになった。日本ではすでに50万台の車にGPSを利用したカーナビゲーションシステムが装備されている。

 これはまだ,ほんの始まりにすぎない。GPS受信器と関連技術の市場規模は現在,世界で20億ドル以上と推定されているが,10年後には300億ドルを上回ると予想される。
   
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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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