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BEYOND DISCOVERY
日経サイエンス
B型肝炎の物語
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1. イントロダクション
2. B型肝炎:体を衰弱させる病気
3. 血液に手がかりを探る
4. ブレークスルーをもたらした血液試料
5. 驚くべき発見
6. 血液スクリーニング検査の革命
7. 粒子の正体は?
8. 肝臓ガンを予防するワクチン
9. 次々に明かされた多種の肝炎
10. クレジット
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BEYOND DISCOVERY
THE PATH FROM RESEARCH TO HUMAN BENEFIT
■B型肝炎:体を衰弱させる病気
 ウイルス性の肝炎は非常に患者数の多い感染症で,世界で毎年150万人もの人が命を落としていると推定される。B型肝炎にかかるとたいていは皮膚に明確な黄疸が出るので,有史以来,診断は容易だった。このほか急性の症状としては発熱や悪寒,疲労,吐き気,食欲減退,腹痛などがある。これらはふつう数週間で鎮静化するが,重症のB型肝炎になって急速に危篤状態に陥る場合もある。
 
 B型肝炎は急性だけとは限らない。慢性の場合には急性症状は出ないが,体重の減少や疲労感,腹痛,黄疸のほか,肝臓に障害が出る。こうした例では15年以上にわたって肝臓の障害が進み,ついには肝機能低下や肝臓ガンで死に至る。また,世界中に多数の「キャリアー(病原体の保有者)」がいる。こうした人たちの場合,体内の免疫系がウイルスに寛容になっており,外敵と見なさない。このためキャリアーには数十年にわたって症状がまったく現れず,知らず知らずのうちに他人にウイルスを感染させてしまうことにもなる。母親がキャリアーだと,生まれてくる子どもにウイルスをうつす場合が極めて多く,その子もキャリアーになる。生まれながらにして,肝炎ウイルスが体の一部だと見なされてしまうからだ。
 
 肝炎は何世紀も前から知られているが,ウイルスが原因だとは第二次世界大戦前にはわかっていなかった。人口密度が高く非衛生的なところで流行することが多いので伝染性の病気だとは考えられていたが,どのように人から人へとうつるのかは謎だった。
 
 謎の解明に向けた進展があったのは1940年代のことで,肝臓病が専門の英国人医師,マッカラム(F. O. MacCallum)による。彼が取り組んでいたのは,肝炎というよりもむしろ黄熱病だった。黄熱病は蚊によって媒介される死亡率の高い病気で,アフリカや南米で多くの兵士がこの病気のために死んでいた。マッカラムは黄熱病のワクチン製造を命じられたが,そのワクチンを投与した兵士の相当数が数カ月後に肝炎を発症してしまうことに頭を抱えた。黄熱病ワクチンにはヒトの血清が含まれていた。ヒトの血清を含むワクチンを接種した後にやはり肝炎になった別の症例が医学論文で報告されていることにマッカラムは気づいた。また彼は,糖尿病や性病の患者に使った注射器や注射針を消毒せずに再使用すると肝炎を引き起こす例があることにも気づいた。こうした医療器具には微量の血液が付着したままになっていた可能性がある。マッカラムは人間の血液中に存在するウイルスが肝炎を引き起こすのではないかと疑うようになった。
 
 戦中と戦後にマッカラムらが患者たちを観察した結果,この仮説が強まった。また,血液だけでなく他の要因でも肝炎が広がることも明らかになった。マッカラムは,主にごく微量の糞便に汚染された食物や飲料水を通じて広がる肝炎を「A型肝炎」,主に汚染血液との接触によってうつる肝炎を「B型肝炎」と名づけた。
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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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