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BEYOND DISCOVERY
日経サイエンス
B型肝炎の物語
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1. イントロダクション
2. B型肝炎:体を衰弱させる病気
3. 血液に手がかりを探る
4. ブレークスルーをもたらした血液試料
5. 驚くべき発見
6. 血液スクリーニング検査の革命
7. 粒子の正体は?
8. 肝臓ガンを予防するワクチン
9. 次々に明かされた多種の肝炎
10. クレジット
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BEYOND DISCOVERY
THE PATH FROM RESEARCH TO HUMAN BENEFIT
■驚くべき発見
 ブラムバーグはこの抗原が白血病へのかかりやすさに影響する遺伝的な血液タンパク質多型かもしれないと考えたが,彼は別の可能性(ウイルスのような感染因子など)によっても白血病との関係を説明できることに気づいていた。この関係を明らかにするため,彼はダウン症の子どもたちの血液中にオーストラリア抗原があるのではないかと調べ始めた。ダウン症の患者は白血病になるリスクが特に高いからだ。その結果,小児患者の1/3近くにオーストラリア抗原が見つかった。ブラムバーグは続いていろいろな環境に置かれたさまざまな年齢層のダウン症患者で検査した。新生児患者ではオーストラリア抗原の検査結果は陰性だったが,大規模な病院に収容されているほど,患者の性別によらず結果は陽性になりやすかった。これはオーストラリア抗原がある種の感染と関係している可能性を示唆していた。
 
 ふつう,オーストラリア抗原が陰性の子どもたちは再検査しても陰性で,陽性の子どもたちは陽性のままだった。もしオーストラリア抗原が血液タンパク質の多型なら,生まれつき決まっているものだから,この結果は当然だ。しかし,1966年にブラムバーグはロンドン(W. Thomas London)とサトニック(Alton Sutnick)とともに,最初の検査ではオーストラリア抗原をまったく示さなかったダウン症の12歳の少年が数カ月後の検査では陽性になったことを発見した。注目すべきことに,この少年は寒 天ゲル拡散法検査でオーストラリア抗原を示したばかりでなく,肝炎になってもいた。この一致は,オーストラリア抗原が遺伝的な血液タンパク質の多型ではなく,むしろ肝炎と関係していることを示している。多くの研究者がこの仮説を探り始めた。さまざまな患者を検査した結果,肝炎の患者ではオーストラリア抗原検査が陽性になる場合が多いことがわかった。さらに,ブラムバーグの研究室の女性技師が健康を害したことで,この仮説は劇的な形で裏付けられた。この技師はオーストラリア抗原と肝炎の関連性を知っていたので,自分自身の血清を調べた。結果は陽性だった。彼女は後に肝炎を発症し,ウイルス性肝炎をオーストラリア抗原検査によって診断した初めての人物となった。
 
 ニューヨーク血液センターのウイルス研究者プリンス(Alfred Prince)はブラムバーグの発見を聞き知って,1960年代半ばにある実験を始めた。この実験がオーストラリア抗原と肝炎の関係をついに確認することになる。輸血を受けた患者は10人のうち少なくとも1人が肝炎になることを知って,プリンスはオーストラリア抗原が肝炎の潜伏期間中に患者の血液中に現れるかどうかを見極めようとした。もしオーストラリア抗原が肝炎を引き起こすウイルスの一部だとすれば,症状が出る前に血液中に現れるはずだ。プリンスはニューヨーク血液センターで患者たちの血液試料を定期的に採取し,冷凍装置に保存した。ついに1968年,彼は血液採取患者の1人が肝炎の症状を明確に示しているとの報告を受けた。その男性患者の血液試料を調べたところ,初期に採取した血液にはオーストラリア抗原が見られないのに,肝炎発症の数週間前に採取した血液には間違いなく存在していた。これはオーストラリア抗原が実際にB型肝炎の発病に関連していることを強く示す直接の証拠だ。
 
 ほぼ同じころ,東京大学にいた大河内一雄(おおこうち・かずお)は,オーストラリア抗原陽性の血液を輸血した場合,陰性の血液よりも肝炎を起こしやすいことを示した。イタリアのシエナ大学のビエルッチ(Alvert Vierrucci)は同じ1968年に,プリンスと大河内の報告をそれぞれ確認した。さらに1970年,ロンドンのミドルセックス病院のデーン(D. S. Dane)らやニューヨークのアンダーソン(K. E. Anderson)らがオーストラリア抗原陽性の人の血清を電子顕微鏡で調べてウイルスらしき粒子を発見したことで,オーストラリア抗原と肝炎の関連性はさらに強まった。彼らは肝炎患者の肝臓細胞からもウイルスと見られる粒子を発見した。
 
 こうした事実の積み重ねによって,1970年代末にはこの分野のほぼすべての研究者が一致した結論にたどり着いた。オーストラリア抗原はB型肝炎を引き起こすウイルスの一部なのだ〔この時点で「オーストラリア抗原」は「肝炎関連抗原(HAA)」と呼ばれるようになっていた。現在では,正式には「B型肝炎表皮抗原(HBsAg)」と呼ぶ〕。白血病や血友病の患者のうち血液中にB型肝炎表皮抗原がよく見られる人は,いずれも輸血を何度も受ける必要があった例であり,B型肝炎ウイルスに汚染された血液を輸血された可能性が大きいと考えられた。
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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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