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BEYOND DISCOVERY
日経サイエンス
B型肝炎の物語
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1. イントロダクション
2. B型肝炎:体を衰弱させる病気
3. 血液に手がかりを探る
4. ブレークスルーをもたらした血液試料
5. 驚くべき発見
6. 血液スクリーニング検査の革命
7. 粒子の正体は?
8. 肝臓ガンを予防するワクチン
9. 次々に明かされた多種の肝炎
10. クレジット
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BEYOND DISCOVERY
THE PATH FROM RESEARCH TO HUMAN BENEFIT
■次々に明かされた多種の肝炎
 B型肝炎ウイルスを突き止めた成功に勢いを得て,多くの研究者がA型肝炎の研究に力を入れ,他の肝炎らしきウイルスの解明を狙った研究も進んだ。1973年,米国立衛生研究所(NIH)のフェインストン(Stephen M. Feinstone)らは電子顕微鏡を使って感染者の大便を調べ,ウイルス粒子を観察した。ほぼ同じころ,メルク社のヒルマンらはフェインストンがマーモセット(サルの一種)の肝臓から抽出したウイルスの中からヒトA型肝炎ウイルスを特定した。ヒルマンらは1996年に弱毒化A型肝炎ワクチン(発病しないように改造したウイルスから作ったワクチン)を作成し,一般利用の認可を受けた。スミスクライン・ビーチャムの研究所も別のA型肝炎ワクチンを開発した。
 
 1978年,ジョージタウン大学にいたイタリア人消化器内科医のリゼット(Mario Rizzetto)と分子ウイルス学者のゲリン(John Gerin)はD型肝炎ウイルスを発見した。このまれなウイルスはB型肝炎ウイルスが存在するところで生き残り,一緒になって重い症状を引き起こす。1983年にはモスクワにある脊髄性小児麻痺・ウイルス性脳炎研究所のバラヤーン(Mikhail Balayan)がE型肝炎ウイルスを発見した。E型肝炎はA型肝炎と同じく汚染された食品や飲料水から広がり,通常は局地的な流行を見せる。
 
 B型肝炎ウイルスの血液スクリーニングが行われるようになったにもかかわらず,輸血後に肝炎になる例がまだ残り,これらは「非A非B型肝炎」と呼ばれていた。血液を通して感染するウイルスの存在が疑われたため,研究者たちはまず未知の非A非B肝炎ウイルスを分離し,血液中からそれを特定するという戦略に力を入れた。これらの課題を達成すれば,遺伝子組み換えワクチンを開発できると期待された。しかし,非A非B肝炎の病原体は非常につかみどころのないものだった。1983年にカイロン社はこの謎の解明に向けて大規模な研究に乗り出した。米疾病対策センター(CDC)のブラッドレー(Daniel Bradley)や同社のホートン(Michael Houghton),クオ(George Kuo),チュー(Que Lim Choo)らが共同で研究にあたった。ブラッドレーは非A非B型肝炎の病原体を含むヒトの血清によって感染させたチンパンジーを研究しており,感染チンパンジーの血清をカイロン社に提供した。1989年にホートンらは分子生物学的手法でC型肝炎ウイルス(非A非B型肝炎の80〜90%を占める病原体)のクローンを作り,新たな時代を切り開いた。これは科学的な偉業だった。というのも,この未知の病原体はそれまでに特定された肝炎ウイルスとは違って,電子顕微鏡でとらえられておらず,培養もされておらず,免疫学的な性質も知られていなかったからだ。C型肝炎に対する高感度で効果的な血液検査法が1990年に導入された結果,現在では輸血に伴う肝炎の発生率は輸血血液10万ユニットにつき1件程度にまで減った。
 
 こうした過去30年間にわたる肝炎ウイルスの発見と血液スクリーニングやワクチンの開発を受けて,研究者たちは明るい希望を抱くようになった。ウイルス性肝炎はやがて征服され,数千年にわたって人類の健康を脅かしてきた歴史に終止符が打たれるだろう。
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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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