小児白血病の
治療
1. 小児白血病の治療
―イントロダクション
2. 命を救われた少女
3. 標的を特定する
4. 鍵と鍵穴
5. 生産ラインを遮断する
6. 初期の化学療法
. 仮説に賭ける
8. 系統的な医学研究
9. 新たな展望
10. クレジット
命を救われた少女
 デビー・ブラウン(Debbie Brown)は突然,慢性疲労に陥った。あまりに疲労が激しく,階段は這って上がらねばならなかったし,軽くぶつけただけで打ち身ができた。デビーが白血病にかかったのは1954年,9歳のときだった。

 これがもう1年前のことだったら,デビーは数カ月もせずに亡くなっていただろう。しかし,デビーの主治医はニューヨークにあるスローン・ケタリング記念病院のバーチュネル(Joseph Burchenal)の最新の研究を知っていた。デビーはバーチュネルに紹介され,6メルカプトプリン(6-MP)とメソトレキサートという2種類の実験的な医薬品と,生きるチャンスを与えられた。

 この2つの医薬品は現在も白血病の化学療法に使われている。自然の中や実験室で偶然に発見されたのではなく,研究者がデザインして作った医薬品の先駈けだ。

 これらの医薬品がなかったら,デビーの余命は3カ月だったろう。薬のおかげで,デビーは小児白血病のおそらく最初の長期生存者となった。完治を宣言されたわけではないが,バーチュネル医師の診察を受ける回数がしだいに少なくなった。1969年には最初の子どもを産み,現在はニュージャージー州の学校で先生をしている。

 ただ,小児白血病をめぐる物語は1954年で終わったのではない。当時,デビーは幸運な例外だった。今日では小児白血病の治癒率は約80%に達しているが,多いときには12種類もの医薬品を複雑に組み合わせて使わなければならないし,輸血や放射線療法も必要だ。だが,この進行の速い病気もなんとかなると医師に希望を抱かせたのが,デビーを救った「代謝拮抗薬」だった。
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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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