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BEYOND DISCOVERY
日経サイエンス
爆発物から治療ガスへ
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1. イントロダクション
2. 心臓と血圧
3. 爆発性の治療薬
4. 細胞のメッセージに耳を傾ける
5. EDRFの発見
6. EDRFと一酸化窒素がつながる
7. 一酸化窒素の広がり
8. 将来の治療
9. クレジット
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BEYOND DISCOVERY
THE PATH FROM RESEARCH TO HUMAN BENEFIT
■心臓と血圧
 19世紀に比べると,現在では循環器系の病気を効果的に治療できるようになった。血液循環の仕組みや,その制御機構が解明されたおかげだ。しかし,歴史を振り返ると,血液が循環しているという考え方そのものが受け入れられなかった時代もあった。2世紀にギリシャの解剖学者ガレノス(Galen)は,動脈が空気でなく血液を運んでいると的確に指摘したが,一方では肝臓が血液システムの中心であるなどと,まったく誤った考えも残している。こうした誤りの多くは,1628年にハーベイ(William Harvey)が出版した大業績『心臓の動きについて(De Motu Cordis)』によって払拭された。ハーベイは「国王が国家における最高の権威であるように,心臓は全身を支配している」と述べている。
 
image 『心臓の動きについて』のもっとも大きな功績は,ハーベイが血液循環を見極めたことだ。血液の流れが心臓から出ているのか心臓に向かっているのかを確かめようと,彼は血管を取り出して縛った。そして,多量の血液が心臓から体内組織に移動していると結論づけた。この血液の量は,心臓で新たに作り出せるものでも体内組織で消えてなくなるものでもなかった。血液が体内組織をめぐった後,継続的に心臓に戻って来ると考えなければ説明がつかない。
 
 それから一世紀たった後に,英国の地方都市テディントンの牧師ヘールズ(Stephen Hales)が,ハーベイが示した規則正しい血液循環が実は常に変動していることを突き止めた。ウマやヒツジ,シカ,さまざまな種類のイヌを使った一連の実験を通じて,ヘールズは血圧の概念を確立した。1733年に発表された有名な実験では雌ウマを縛りつけ,動脈に細い真鍮の管を差し込み,9フィート(2.7m)の垂直なガラス管をそれに取り付けた。ウマの血液循環の圧力によって,ガラス管中の血液は8フィート3インチ(2.47m)の高さになった。ウマの鼓動(おそらく速いものだったろう)に応じて,血液は2〜4インチ(5〜10cm)の範囲で上下した。最高圧力は心臓の収縮力を反映し,低いほうの圧力は体中の血管が血流に及ぼしている抵抗の指標だとヘールズは考えた。
 
image ヘールズは動物から血液を取り去っていくと血圧が下がることも発見した。しかし,これは血圧に影響を与える唯一の方法ではなかった。ヘールズの発見に数年先立つ1727年,プルフォワ・デュ・プチ(Pourfois du Petit)という名のフランスの生理学者が,首の神経を切断すると眼の血管が拡張すると報告していた。さらに,血管の収縮を示す別の実験結果が続いた。1800年代初めには,血管の周囲にある平滑筋がさまざまな神経からの信号に応じて収縮したり弛緩したりし,それに応じて血管を締めつけたり広げたりしていることが,解剖学者たちによって明らかになった。
 
 血圧の測定は,ヘールズ式の真鍮管とガラス管の仕掛けが19世紀になってしだいに改良され,実用的なものになった。1854年,ドイツのチュービンゲンにいた生理学者フォン・フィアロート(Karl von Vierordt)は,外から圧力をかけていって血流が止まる時の圧力を調べれば,血圧がわかることに気がついた。フィアロートは重りとテコを使った複雑な装置を考案したが,これが後に血圧計の加圧帯につながる。いくつかの改良を経て近代的な血圧計が1905年に登場し,医師たちは血管の拡張と最低血圧とを関連づけられるようになった。明らかに身体は血圧を巧みに制御しており,少なくとも部分的には神経を通じて制御していた。しかし,その詳しい過程は依然として謎だった。
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