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BEYOND DISCOVERY
日経サイエンス
爆発物から治療ガスへ
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1. イントロダクション
2. 心臓と血圧
3. 爆発性の治療薬
4. 細胞のメッセージに耳を傾ける
5. EDRFの発見
6. EDRFと一酸化窒素がつながる
7. 一酸化窒素の広がり
8. 将来の治療
9. クレジット
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BEYOND DISCOVERY
THE PATH FROM RESEARCH TO HUMAN BENEFIT
■一酸化窒素の広がり
 EDRFと一酸化窒素が同じ物質であるという見方は,1980年代初めに別の研究グループによってなされた発見からも裏付けられた。例えば1981年にイグナロは一酸化窒素が血小板という血液細胞が凝集して血塊になるのを妨げていることを発見した。一酸化窒素はこのように,血管閉塞を2通りの方法で防いでいる。1つは血管の拡張で,もう1つは凝固過程の阻止だ。ただし,2つ目の反応の発見があったからといって,1つ目(血管の弛緩)の重要性が損なわれるわけではない。
 
 一酸化窒素が生物学的な情報伝達物質であって,単に身体が反応する化学物質という以上の意味を持っているという事実は,マサチューセッツ工科大学(MIT)のタンネンバウム(Steven Tannenbaum)の同年の発見で裏付けられた。彼のチームは,一酸化窒素に関連する化学物質を作る腸内細菌をマウスから取り除いても,硝酸塩(NO3-)ができて排出されることを発見した。体内で一酸化窒素が作られているとすれば,老廃物として硝酸塩ができるのは理にかなっている。タンネンバウムはそれ以前に行った研究で,感染症患者では尿中の硝酸塩濃度が劇的に上がることを示していた。また1985年に,当時MITにいたマーレッタ(Michael Marletta)が,マクロファージという免疫細胞が細菌からの有毒分子に出合うと硝酸塩を作り出すことを発見した。マーレッタとユタ大学のヒブス(John Hibbs)がさらに分析した結果,マクロファージが作り出した一酸化窒素は侵入してきた細菌を殺すのに一役買った後,ただちに亜硝酸塩(NO2-)や硝酸塩に分解することがわかった。そして1988年,英国のリバプール大学のガースウェイト(John Garthwaite)がグルタミン酸という脳の神経伝達分子が神経細胞を刺激し,EDRFに極めて似た化学物質を放出させることを発見した。この化学物質は後にやはり一酸化窒素だと判明するのだが,近くの神経細胞に神経伝達物質を放出させ,さまざまな作用をもたらす。
 
 最初は疑問視された一酸化窒素の役割だが,反論はしだいに影を潜めていった。細胞で作られる一酸化窒素はごくわずかで,しかもすぐに分解してしまうので,毒性は生じない。このような低濃度の一酸化窒素の場合,反応して有害な二酸化窒素が作られることがないのだ。実際,こうした一酸化窒素の特性のいくつかは,情報伝達物質として極めて有用だ。一酸化窒素は内皮細胞から目標の筋肉細胞へと容易に移動できるうえ,すぐに分解してしまうので,体は常に変化する環境に反応して弛緩系を素早く働かせることができる。
 
 しかし,この弛緩系の変化の仕組みを完全に解明するには,一酸化窒素を作り出すタンパク質を突き止めるという仕事が残っていた。1つの手がかりは,ヒブスとマーレッタが以前ミシガン大学にいたころに行った研究の中にあった。2人はその研究で,マクロファージがアミノ酸のL-アルギニンから亜硝酸塩と硝酸塩を作っていることを明らかにしていた。このため,L-アルギニンを一酸化窒素に変換する酵素を分離する競争が始まった。1990年,メリーランド州ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンズ大学のブレッド(David Bredt)とスナイダー(Solomon Snyder)がこの酵素のうち脳で働いているものを初めて純粋な試料として抽出し,脳一酸化窒素合成酵素(bNOS,NOS-1ともいう)と名づけた。翌年,彼らはbNOSの生産を指示している遺伝子を特定した。別の研究者たちはこれに続いて,やはり一酸化窒素を作る関連タンパク質を特定した。血管内皮細胞から抽出されたeNOS(NOS-3ともいう)や,感染症になったときにマクロファージによって誘導されるiNOS(NOS-2ともいう)などだ。一酸化窒素の重要性はもはやだれの目にも明らかになった。 
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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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