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BEYOND DISCOVERY
日経サイエンス
海洋の秘密を音で探る
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1. イントロダクション
2. 音と振動
3. 音によるナビゲーション
4. 無音の影領域
5. 海洋での音の伝播
6. 音の伝達経路
7. 海洋に耳を傾ける
8. 海洋の内部を音で探る
9. クレジット
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BEYOND DISCOVERY
THE PATH FROM RESEARCH TO HUMAN BENEFIT
■無音の影領域
 調査にあたった科学者たちは,ちょうど1937年に発明された深海自記温度計(bathythermograph; BT)という新装置を利用することができた。ウッズホール海洋研究所とマサチューセッツ工科大学(MIT)に所属するスピルハウス(Athelstan Spilhaus)が発明した装置だ。小型の水雷のような形をしており,温度センサーと水圧の変化を検出する仕組みを備えていた。船から海に下ろすと,海の中を沈んでいきながら,温度と圧力の変化を記録する。デシバール単位で測った水圧の値はメートル単位での水深におおよそ等しいから,水深と温度の対応関係がわかる。スピルハウスは,深海自記温度計を利用すれば海洋に関する基本的な事柄が数多くわかるだろうと考えた。例えば水温や深度が海洋生物に及ぼす影響,海流の構造,特にメキシコ湾流のような巨大な流れの周辺部にできる小さな渦の様子などが明らかになるはずだ。しかし,アイスリンと米海軍は深海自記温度計を使って別の発見を成し遂げた。すぐにでも役立つ有益な発見だった。
 
 海の表層が太陽光によって暖められ,午後の早い段階には表面から深さ5〜9mの水温がそれよりも下の水に比べて1〜2℃高くなっていることが,深海自記温度計のデータからわかった。この表層よりも下では,深くなるにつれて海水は急激に冷たくなる。水中の音速は温度が高いほど速いから,船のソナーが発した音響信号は暖水の層を素早く伝わり,その下の冷たい水にぶつかると急激に遅くなる。image異なる特性の層を通過する際に音波は屈折し,音が速く伝わる領域から遠ざかり,音速が遅くなる領域へは引き寄せられるように曲がることを科学者たちは発見した。この屈折の結果,音響的な“影領域”ができ,暖水と冷水を分ける境界のすぐ下に位置する潜水艦はソナーでは検知できなくなる。
 
 アイスリンは音響影領域と深海自記温度計が水中戦で重大な意味を持つことを即座に認識した。潜水艦に深海自記温度計を装備すれば,追跡してくる戦艦から見た影領域がどこにあるかがわかり,そこへ潜り込むことによって敵のソナー探知をかわすことができるだろう。一方,駆潜艇の立場で深海自記温度計を使えば,予測される屈折効果を考慮に入れてソナーの方向をうまく調整できるだろう。
 
 第二次世界大戦の間,米海軍はすべての潜水艦と対潜水艦戦に参画する戦艦に深海自記温度計を標準装備した。海軍将校たちはいかに深海自記温度計を使うかをウッズホール海洋研究所で学び,海洋学者たちは全国の海軍基地をめぐって戦闘要員の訓練にあたった。潜水艦の乗組員は深海自記温度計の記録をすべてウッズホール海洋研究所もしくはポイントローマにあるカリフォルニア大学戦争研究部に送るように指示され,これらの機関がソナーチャートを作成して艦隊へ送った。
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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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