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BEYOND DISCOVERY
日経サイエンス
海洋の秘密を音で探る
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1. イントロダクション
2. 音と振動
3. 音によるナビゲーション
4. 無音の影領域
5. 海洋での音の伝播
6. 音の伝達経路
7. 海洋に耳を傾ける
8. 海洋の内部を音で探る
9. クレジット
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BEYOND DISCOVERY
THE PATH FROM RESEARCH TO HUMAN BENEFIT
■海洋に耳を傾ける
 冷戦の終結に伴い,米海軍は民間の科学者たちが基礎研究のためにソーサスを利用することを認め,他の手段では得られない情報が科学者の手に入るようになった。闇に閉ざされてきた深海の地質や生物を知るために,水中音響を利用できるようになったのだ。1990年,太平洋海洋環境研究所のフォックス(Christopher Fox)らはソーサスの軍民両用の先駆けとなる研究を提案した。1991年以来,熱水噴出孔調査計画「VENTS」に参画するフォックスのチームはソーサスを利用して海底火山が噴火している位置を突き止めてきた。これによって中央海嶺に沿って発生する噴火現象の実態が明らかになっている。中央海嶺は海底で山のように盛り上がっている高地で,そこでは地殻の下からわき上がってきた溶岩が海洋底を作り出している(海洋底の拡大については「地殻変動を探る−−海底拡大とプレートテクトニクス」を参照)。
 
 フォックスたちは海底火山の噴火音の記録を調べる中で,別のノイズを耳にした。ヒゲクジラの声などだ。コーネル大学の音響生物学者クラーク(Christopher Clark)も,ソーサスの観測基地を1992年に初めて訪問したとき,ソーサスを使ってクジラの声が聞けることに気づいていた。クラークが1日24時間分の音響信号のグラフをスクロールして調べたところ,どの日にもシロナガスクジラやナガスクジラ,ミンククジラ,ザトウクジラの声紋が見つかった。実際にこれらの声を聞くこともできた。西インド諸島に設置されたソーサス受信機によって,1770km離れたところにいるクジラの声がキャッチされた。
 
 クジラは地球上で最大の生物だ。例えばシロナガスクジラは体長100フィート(約30m),体重は数トンにもなる。にもかかわらず,クジラの実態は非常にとらえにくかった。シロナガスクジラを観察するには,彼らが海面に浮上してくるのを船の上で辛抱強く待たなければならない。こうして少数のクジラを短時間追うことはできても,長距離にわたる追跡観察は無理で,生態はほとんど謎のままだった。ソーサスの観測基地を利用すれば,クジラをリアルタイムで追跡し,その位置を地図上に記録できる。さらに,一度にたった1頭というのではなく,北大西洋と北太平洋東部の全域にわたって多数の個体を同時に追跡できる。クジラの鳴き方を聞き分けることも可能だ。例えばフォックスたちはナガスクジラの鳴き声(コール)が季節によって変化することを検出し,太平洋のシロナガスクジラが生息域によって異なる鳴き方をしていることを発見した。
 
 クジラに関する謎のうちで最も興味をそそるのは,広大な海の中で彼らがどのように方角を認識しているかという点だ。クラークはクジラがイルカやコウモリと同じように反響位置決定法を利用しているのではないかと考えた。ただし,たかだか数m離れた物体からの反響音ではなく,クジラは自分たちが発した音によって数百kmも離れたところの地形を検知する。自ら発した音によってクジラが自分の位置を確かめているという考え方はすでに少し前からあったが,ソーサスの追跡データのおかげで,クラークはこの見方を支持する強力な状況証拠をいくつかつかんだ。ソーサスで追跡したある1頭のクジラの移動経路を海底地図に重ねたところ,互いに数百km離れた海山の間をまるでスラロームするようにジグザグに進んでいる様子がわかったのだ。他のクジラについても同じ結果になった。クラークはクジラが音をコミュニケーションだけでなく,航海の進路決定に利用しているのだと考えている。聴覚を利用して海図を描き,自分たちの進路を見つけ出しているのだ。
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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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