水中音響学の進歩
この年表は,音響海洋学による海洋の理解につながった基礎研究の流れを示す。
1490年
ダ・ビンチ(Leonardo da Vinci),船の音が水中を長距離にわたって伝わることに注目。
1687年
ニュートン(Sir Isaac Newton)が著書『プリンキピア』の中で,音の伝播に関する初の数学的理論を公表。
1826年
スイス人物理学者のコラドン(Daniel Colladon)とフランス人数学者のスチュルム(Charles Sturm)がレマン湖の水中を伝わる音の速度を測定し,秒速1435mという結果を得た。空気中の音速の5倍近いスピード。
1877年
レイリー卿(Lord Rayleigh)が『音の理論』を出版,近代的な音響学の理論的基礎を築く。
1912年
リチャードソン(L. F. Richardson)が水中を伝わる音を利用した反響測距法の特許を英国特許庁に出願。
1914年
フェセンデン(Reginald A. Fessenden)が反響測距装置向けの新種の振動子について米国特許を取得。
1919年
ドイツの科学者リヒテ(H. Lichte)が水中では温度や塩分濃度,圧力のわずかな差によって音波が屈折することを理論化。
1937年
スピルハウス(Athelstan Spilhaus)が深海自記温度計(BT)を作製。
1943年
コロンビア大学のユーイング(Maurice Ewing)とワーズル(J. L. Worzel)が深部音響チャネルを発見。ロシアの科学者ブレコフスキ(Leonid Brekhovskikh)も,日本海での研究をもとに同じ現象を発見。
1954〜55年
米海軍が海底の音を探る第一世代の水中音響哨戒網を実用化。後にソーサス(SOSUS; Sound Surveillance System)と呼ばれる。
1978年
スクリプス海洋研究所のムンク(Walter Munk)とマサチューセッツ工科大学のビュンシュ(Carl Wunsch)が音を利用して海洋の温度分布に関する3次元地図を作成することを提案。
1983〜89年
現在ペンシルバニア州立大学にいるスピースバーガー(John Spiesberger)と,ミシガン大学のメッツガー(Kurt Metzger)が,海盆を越えて伝わってくる音の伝達時間のわずかな違いが平均水温の変化を示すことを実験的に確かめる。
1991年
ハード島での実証試験で,9カ国から参加した科学者たちが北極海を除く全海域で音響信号を1万8000kmの距離にわたって水中伝送することに成功。
1992年
ソーサスを利用してクジラのリアルタイム追跡が始まる。
1993年
ソーサスによって海底火山の噴火が初めて遠隔検出される。
1996年
海洋気候音響温度測定計画「エイトック(ATOC)」が北太平洋において音響信号の伝送を開始。
1998年
水中音響北極気候観測計画「アクーズ(ACOUS)」が北極海で定常観測を開始。