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BEYOND DISCOVERY
日経サイエンス
■ポリマーと人々
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THE PATH FROM RESEARCH TO HUMAN BENEFIT
■ポリマーを解明した科学
 ベークライトがあっという間に成功したのを受けて,米国と欧州では合成に関する研究や発明のブームが到来した。当初はアマチュア発明家がやるような運任せのやり方が主流だったが,投資額が増えるにつれ,より体系的な研究が行われるようになった。科学者たちは原料や処理条件をあれこれ試すだけではあき足らず,ポリマーの分子構造を解明しようと基礎研究に乗り出した。

image01 1920年,ドイツ人化学者のシュタウディンガー(Hermann Staudinger)はポリマーのユニークな性質に興味を覚え,その性質と化学特性を調べ始めた。その結果,ポリマーは同一あるいは類縁の化学単位がたくさん集まった長い鎖状の分子からできているらしいことがわかった。また,ポリマーが非常に強い引っ張り強度と弾力性を示すのは鎖分子が非常に長いため,つまり化学用語を使えば分子量が大きいためだと考えた。シュタウディンガーのアイデアは今日から見ればさほど急進的には思えないだろうが,当時は有機化学者仲間の嘲笑を買い,科学界から黙殺された。実際,鎖分子の存在がようやく受け入れられたのは1928年のことで,ドイツ・ルートウィヒスハーフェンの化学会社I. G. ファルベン・インドゥストリーに勤めるマイヤー(Kurt Meyer)とマルク(Herman Mark)がポリマーの結晶構造をX線で調べ,鎖分子の存在を証明してからだ。さらに長い年月の後,シュタウディンガーの粘り強い努力が認められ,1953年に高分子化学者としては初のノーベル賞を授与された。

image01 ポリマーは多くの小さな化学単位から成る長い鎖であり,ポリマーの性質と反応性は主に鎖の長さによって決まる――というシュタウディンガーの重要な指摘によって,分子量,つまり鎖の長さを調べる機器の必要性が高まった。初期の測定機器の1つは,スウェーデンの化学者スベドベリ(Theodor Svedberg)が発明した超遠心分離機だった。超遠心分離機は試料を超高速で回転し,分子を大きさによって分離する。ポリマー試料の分子の大きさと,大きさの分布の両方を推定するのに使える。

 優れた機器と理論を手に入れたことで,高分子研究者たちは1920年代末になると画期的な技術革新を成し遂げるようになった。1928年,デュポン社は基礎研究を専門に行う新しい研究所で新種のポリマーを開発するため,化学者のカロザース(Wallace Hume Carothers)を雇い入れた。カロザースは当時まだ異論のあったシュタウディンガーの説を検証するため,小さな有機化合物を慎重につなげて長い鎖にし,その性質を調べた。その結果,非常に長い鎖分子を集めると,より硬くて強く,稠密な素材になることを発見した。1930年にはカロザースの体系的な合成手法が実を結び,ポリアミドという新種のポリマーを作り出した。これが「ナイロン」だ。このポリマーを溶かした状態から細く引き伸ばすと,非常に高強度の繊維になった。
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