遺伝子組み換え作物
1. イントロダクション
2. 新しい種子の交配
3. 従来の品種改良の限界
4. 植物の病気を上手に利用
5. 望ましい遺伝子の探索
6. クラウンゴール菌とBt遺伝子の出合い
7. 遺伝的な障害
8. ウイルス抵抗性
9. 除草剤耐性
10. 遺伝子組み換え植物がもたらした問題
11. さまざまな可能性を求めて
12. クレジット
遺伝子組み換え植物がもたらした問題
 遺伝子組み換え種子に関して,研究者や規制当局は1つの問題に直面している。害虫が遺伝子組み換え作物中のBtタンパク質に接し続けるうちに,このタンパク質に抵抗性をもつ害虫が生き残るようになるのだ。この問題に対処するため,種苗会社は畑の一部(全体の4%ほど)に普通の種子を植えてBtに抵抗力のない害虫が生き残る「緩衝地帯」を設けるよう,農家に依頼している。少数のBt耐性害虫が生じたとしても,緩衝地帯で育った非Bt耐性の害虫と交配すれば,その子孫ではBtに抵抗力を持たない性質が優勢になると期待されるからだ。コンピューターによる予測では,こうした緩衝地帯がない場合はBt耐性害虫が10年以内に広範囲に広がってしまう。しかし,緩衝地帯を利用すれば,Bt耐性害虫が深刻な問題になるまでには50年以上かかる。

 もう1つの問題は,Btや除草剤耐性の遺伝子が他家受粉によって近縁の雑草に広がる可能性がある点だ。他家受粉は植物の進化ではよくみられる。多くの植物種は繁殖力のある雑種を生み出し,作物の遺伝子が近縁の野生種や雑草へと移動することもある。こうして特定の除草剤に対する耐性を持つ雑草ができてしまうかもしれない。それでも,研究者は環境に対する良い影響が悪影響よりもはるかに大きいと考えている。

 最後に,こんな懸念もある。ある食用植物中のアレルギー誘発性タンパク質をつくる遺伝子が,遺伝子組み換えによって別の植物に導入され,アレルギーのある人がそれと知らずに食べてしまうという心配だ。このため米食品医薬品局(FDA)は,アレルゲンがあるとわかっている生物の遺伝子を導入した食品はどれも徹底的に試験して,アレルギーを誘発しないことを確かめるよう求めている。

 また,時には導入された遺伝子が作物中で予想外の結果を生じることもある。しかし,同じことは従来の交配でも起きうる。もちろん,遺伝子組み換え作物も従来の交配による作物も,徹底的に試験して,その性質と安全性を確認する必要がある。全米研究評議会や農務省,FDAは遺伝子組み換え作物が人の健康に及ぼす影響は,従来法で生産された作物よりも大きくはないと結論づけている。従来法による作物新品種の導入に関する規制を,遺伝子組み換え作物にも適用すればよいだろう。
   
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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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