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生態学
外来魚は経済を追って
GDPの高い地域は外来魚の侵入が大きい
海運貿易の発展に伴い,世界中の水路に外来魚が入り込み,在来種を絶滅に追い込むようになった。漁業が崩壊し,外来魚の侵入を食い止めるために各国政府は巨費を費やしている。最近の研究によると,外来魚の繁栄は生態学よりも経済学的な原因による。この研究結果は生態学者にとっては驚きだった。
生態学者たちは長い間,どんな条件なら在来種が外来種の侵入に対して脆弱になるかを議論してきた。1つの仮説は50年前に英国の生態学者エルトン(Charles Elton)が提唱した「生物耐性」だ。強固な生態系には非常に多くの在来種がいて,よそ者が入り込む余地がないのだと考えた。侵入者の前に“満室”のサインが立ちふさがるというわけだ。
だが近年,これに対抗する「生物許容」という仮説が現れた。健全な生息環境は在来種も外来種も等しく引き寄せるという説だ。カリフォルニア大学サンタバーバラ校のレバイン(Jonathan Levine)は,「多くのお客で繁盛しているレストランは料理がおいしい証拠だと考えられて,ますます客が集まるのと同じ」と説明する。
6つのホットスポット
PLoS Biology誌2月号に報告されたある研究は,この長きにわたる議論を混乱させることになった。地球の陸地の80%に相当する1055の河川集水域に関するデータを解析した結果,生息する淡水魚の25%以上が外来種であるような「世界的侵入ホットスポット」が6つ見つかった。それぞれ,西ヨーロッパ,北米・中米の太平洋岸,南米南部,オーストラリアおよびニュージーランド,南アフリカ,中央ユーラシアの広域にわたっている。
論文の主執筆者である仏ポール・サバチエ大学のルプリュール(Fabien Leprieur)は,これら侵入種の数が多い場所は,国内総生産(GDP)が大きく,都市開発が進み,人口密度が高い場所と一致するという。おそらく最大の問題は,これらホットスポットでは絶滅の危機に瀕している在来種の魚の種数も非常に多いことだ。
少なくともこれら河川流域全体の規模で見ると,ルプリュールの発見は生物耐性と生物許容の仮説のどちらとも合致しないとレバインはいう。人間活動によって拡散した侵入種は明らかに,どんな生態系にも定着してしまうのだ。レバインは国際貿易によって外来植物がどう広がるかを研究している。
ルプリュールも「外来淡水魚の個体密度を抑制する自然の営みが,人間活動によって弱まっているのは驚きだ」という。ただし,人間が外来魚の繁栄を助けているのは想像に難くないともいう。経済活動が活発な国ほど国際海運が盛んで,バラスト水に紛れ込んだ魚を運んで来てしまうし,水産養殖やペット産業の規模が大きく,そこから外来魚が環境中に逃げ出す例も多い。また,経済発展に伴いダムや橋など環境を乱すものが多くでき,外来種が広がりやすくなっている可能性がある。
これ以上の混乱を避けよ
米海洋大気局(NOAA)の生態学者で五大湖を研究するスタートバント(Rochelle Sturtevant)は,ルプリュールの研究成果が発展途上国への警鐘となるよう期待している。途上国はこれから世界市場に参入し,経済活動によって自国の比較的無傷の生態系を脅かしてしまう恐れがある。
だが残念ながら,同論文の結論は概略を述べたもので,具体的な対策づくりの助けにはなりにくいとスタートバントは指摘する。より詳しい調査研究を行えば,外来種の拡散に一役買っているような生物学的プロセスが見つかるかもしれない。さらに,「GDP」や「都市化」という言葉に「外来種侵入を招く人間活動」という意味合いを持たせるよう,社会意識を変えていくべきだという。
五大湖では
米海洋大気局の生態学者で五大湖を研究しているスタートバントは,大多数の外来種は何の問題も起こさないという。「五大湖にいる185の外来種のうち,経済と環境に長期的に大きな影響を与えたのは10%にすぎないだろう」と説明する。とはいえ,その影響そのものは甚大だ。例えばヤツメウナギ(下の写真)は運河を通って五大湖に入り込み,1950年代後半にはレークトラウト(マスの仲間)を絶滅寸前に追いつめた。現在,少なくとも25種の外来魚が湖を泳ぎ回っており,その結果いくつかの在来種が減っている。
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感染症
鳥インフル,H7も要注意
米疾病対策センター(CDC)の研究チームは,ヨーロッパや北米で鳥からヒトへ感染した鳥インフルエンザウイルス株を調べ,いくつかの株でヒトに感染しやすくなるような変異が起きていることを突き止めた。注目すべきは,パンデミック(世界的大流行)を引き起こす新型インフルエンザの“最有力候補”として警戒されているH5N1型ではなく,H7N3型とH7N2型だった点だ。
研究チームが調べた鳥インフルエンザは,2003年にオランダで80人以上の感染者(死者1人)を出したH7N7型とカナダで2004年に感染者を出したH7N3型,米国で2002〜2003年に出たH7N2型など。3株ともヒトからヒトへの感染はなく,米国とカナダの株はともに感染者は数人で死者はなかった。
解析の結果,感染者の最も多かったH7N7型では変異は見られなかったものの,H7N3型とH7N2型ではヒトの気管の細胞に結合しやすくなるような構造変化が起きていた。特にニューヨークの男性に感染したH7N2型ウイルスをフェレット(イタチの仲間)に感染させたところ,呼吸器官のなかで複製し,他のフェレットにも感染したという。
新型インフルエンザの候補としては,以前からH5型とH7型が挙げられているが,アジアを中心に多くの感染者・死者を出しているのはH5N1型で,ヒトに感染した場合の死亡率もH7型よりもかなり高い。日本の養鶏場のニワトリに被害を出したり,最近,東北や北海道でハクチョウの死体から見つかったのもH5N1型だった(茨城県の養鶏場はH5N2型)。H5N1型への監視は強化されているが,今回の研究報告はH7型も油断できないことを示している。米国科学アカデミー紀要オンライン版5月26日号に掲載。
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情報理論
ブラックホールからの回収
ブラックホールにのみ込まれたものすべてが失われるわけではない。情報はホーキング放射として数兆年の時間をかけて漏れ出してくる可能性がある。最近の分析によると,このデータ回収は以前に考えられていたよりもずっと速く可能だ。
アリスが量子ビットを比較的若いブラックホールにいくつか投げ入れた場合,ボブがこれら量子ビットを再現できるだけのホーキング放射を回収するには,ブラックホールの寿命の半分に相当する長い時間が必要になる。しかし,ブラックホールがすでに寿命の半ばを過ぎていて,しかもボブがアリスのビットと「量子もつれ」(いかなる距離を隔てても作用する特殊な関係)にあるビットを持っているとしたら,話は違ってくる。
アリスがブラックホールに投げ込んだビットの量子もつれは,ホーキング放射にのって外部に出てくる。だから,量子ビットが投げ込まれた後にブラックホールから出てくるホーキング放射をボブが数ビット回収し,それらを自分のビットと混ぜ合わせれば,原理的には,アリスが持っていたビットを再現できるだろう。ボブは,アリスが投げ込んだビット数よりもわずか10%増しのホーキング放射を回収するだけでよい。ブラックホールは毎秒1000ビットに相当するホーキング放射を放出しうるので,たいした時間はかからないだろう。
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嗅覚
“必察” 仕置きの匂い
危険にさらされると,新たな匂いを嗅ぎ分けられるようになるかもしれない。
ノースウエスタン大学の科学者たちは,化学式は同じだが分子構造が鏡に映したように反対になっている匂い物質を被験者に嗅がせる実験をした。構造が右手と左手のような関係にある分子(鏡像異性体)はふつう,同じ匂いがする。だが,一方を嗅いでいるときだけに被験者に弱い電気ショックを加えると,両者をすぐに区別できるようになった。
機能的磁気共鳴画像装置で脳の活動を調べた研究から,強い情動が働くと,脳に古くからある嗅覚中枢が匂いのわずかな差を素早く学習するようになる可能性が示されている。
ノースウエスタン大学のチームは,一部の不安障害患者が匂いに過敏なのは,本当の危険を示す信号と,よく似ているがそれほど致命的でない刺激とを区別できないのが原因ではないかと推測している。また,その研究が不安障害の新治療法の開発に役に立つ可能性があるという。電気ショック並みに衝撃的なこの発見はScience誌3月28日号に掲載。
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