日経サイエンス

日経サイエンスは米国の科学雑誌「SCIENTIFIC AMERICAN」の日本版です。

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SCIENTIFIC AMERICAN
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    NEWS SCAN
    エネルギー
    太陽をつかまえろ
    日本が宇宙太陽光発電の研究に乗り出した
    エネルギー価格の高騰を受け,米国でも関心が再燃している


     西暦2307年,化石燃料は枯渇したが,人類は新たなエネルギーとして大規模な宇宙太陽光発電システムを手に入れていた。しかし,その恩恵を得られるのは一部の大国とその同盟国だけ──日本のSF長編アニメ『機動戦士ガンダム』はそんな状況設定で話が始まる。しかし,最近の世界的なエネルギー不足を背景に,2307年を待たずに宇宙太陽光発電を検討せざるをえなくなってきたようだ。
     日本の科学者たちは,クリーンな再生可能エネルギーとしての宇宙発電を実現するために必要となるハードウエアの開発に取り組んでいる。約20年でプロトタイプを完成する計画だ。


    レーザーまたはマイクロ波で

     宇宙の太陽電池パネルからエネルギーを地上に送るという考え方は昔からあったが,あまりに高くついて実行不可能だとして,ずっと捨て置かれてきた。しかし日本では,この一見すると無理っぽい計画が,現在の世界的なエネルギー危機と環境問題への懸念を背景に,再び注目されている。昨年,レーザー技術総合研究所(大阪市)は最高180ワットのレーザー光を日光から作り出した。2月には北海道の科学者たちが,地球にマイクロ波の形でエネルギーを送る電力伝送システムの地上試験を始めた。
     これらレーザーとマイクロ波の研究は,宇宙航空研究開発機構(JAXA)の主導で進む大胆な宇宙太陽光発電システム(SSPS)計画の両輪をなす。2030年までに,100万kW(大型原子力発電所の出力に相当)のエネルギーを地球に送る太陽光発電衛星を静止軌道に打ち上げることを目指している。エネルギーはマイクロ波またはレーザーの形で地表に送られ,そこで電気に変換して送電網に供給するか,水素の形にして蓄える。
     「研究の理由はいたって自明。化石燃料の枯渇と地球温暖化がもたらす難問に,解決策を提示するためだ」と,JAXA高度ミッション研究センターの鈴木拓明(すずき・ひろあき)はいう。同計画には鈴木をはじめ,日本の主要研究機関から約180人の科学者が加わっている。
     JAXAによると,同計画には明白な利点が考えられる。宇宙では地上に比べて太陽光が5〜10倍強いので,より効率的に発電できる。宇宙なら昼夜を問わず1日24時間集光でき,天候の問題もない。そしてシステムはクリーンであり,汚染物質や廃棄物を出さず,安全でもある。
     地表で受けるエネルギーの強さは1m2あたり5kW程度になるだろう。これは,晴れた夏の日の正午に中緯度地方に降り注ぐ太陽エネルギーの5倍ほどだ。この程度なら人体を傷つける恐れはないとされるが,それでもエネルギー受信領域は海上に設けたうえ,立ち入りを制限することになるだろう。
     JAXAの角田宇宙センター(宮城県角田市)で,鈴木は800Wの光ファイバーレーザーを500m離れた受信ステーションに向けて発射する実験を進めている。波長1064nmの光だけを反射する鏡によって,これを実験的な太陽電池パネルに導く(この波長の光を選んだのは,大気による吸収が少なく,減衰が10%以下ですむため)。今後のポイントは,太陽光を効率的にレーザー光に変換できる材料を見つけること。現在の有力候補は,ネオジムとクロムを添加したイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)のセラミックス材料だ。


    国際協力は実現するか

     基礎研究のほかにも難問がある。マイクロ波とレーザーの両システムを宇宙でテストするには,巨大な構造が必要になる。薄膜集光ミラー,太陽電池パネル,マイクロ波送信アンテナを合わせると長さ数km,重量は1万トン。レーザーアレイは100基として,重量5000トン,長さ10kmだ。地上に設置するマイクロ波受信アンテナは,長さ2kmは必要になるだろう。
     プロジェクト総費用は膨大で,おそらく数兆円になる。しかし鈴木らは費用のことは気にしていない。「まず基本技術を開発しないことには,計画が実行可能かどうかを見極められない」と鈴木はいう。「電力と水素を安価に安定生産することを目指しており,目標価格を電力1kW時につき7円に設定した」。この水準なら現在の従来型発電のコスト並みであり,経済的にも魅力あるものになる可能性がある。
     現在の技術では,宇宙に大規模な構造を輸送するには,世界の宇宙機関が国際協力する以外に手はないだろう。しかし鈴木は,宇宙の軍事利用が広がりそうな情勢のなかで,宇宙先進国はそれぞれに技術を独自開発しようとしているという。「JAXAとNASA(米航空宇宙局),欧州宇宙機関が協働できれば最高だろう」。これは新たなSF大作の前触れにも聞こえる。

    米国でも再認識
     軌道上での太陽光発電構想は米国では数十年前に提唱され,曲折の歴史をたどってきた。1970年代半ばのオイルショック後,NASAは宇宙太陽光発電の研究を始めたが,2001年にこれを打ち切った。しかし,最近のエネルギー価格高騰で,関心に再び火がついている。宇宙安全保障局は昨年10月に発表した事前調査で,宇宙太陽光発電システムを直ちに開発すべきだと主張した。「静止軌道上で地球をぐるりと取り巻く幅1kmの帯が1年間に受け取る太陽エネルギーの量は,現在の地球で知られている採掘可能な石油資源に含まれるエネルギー量に匹敵する」と指摘している。


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    生態学
    表面張力で食べる


     ヒレアシシギという鳥は長細いくちばしをしているので,水やおいしい甲殻類を吸い込むのは苦手だ。その代わり,表面張力という液体の引力を使って餌を吸い上げる。
     この鳥は最初,小さい円を描くように水面を素早く泳ぎ回り,渦を作って生き物を自分の近くにまで引き上げる。次に水面にくちばしを突っ込んで,くちばしを素早く開閉する。このハサミのような動きによって,大きさ約2mmの水滴を吸引・圧縮し,くちばしの先から口のなかへ移動させる。
     マサチューセッツ工科大学とフランス国立科学研究センターのチームが機械式くちばしを作って実験したところ,水が油や洗剤などの汚染物質を含んでいると,水の表面張力が変わって水滴がうまく移動しないことがわかった。Science誌5月16日号に掲載。

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